春も嵐も
「――藤見椎葉…」

その顔を見た俺の口から、その名前が出てきた。

「あら、ご存知のようね」

金髪のスパイラルの持ち主である藤見椎葉は得意気に笑った。

生で見ると、迫力が3倍増しである。

3D眼鏡はかけてないけど、まさにそうだった。

「それにしても、いいところよね。

全てに置いて合格みたいな」

キョロキョロと周りを見回しながら、藤見椎葉は紅い唇を動かした。

「あなた、この商店街に住んでるの?

だったら話を聞いて欲しいわ」

「売却の件で、ですか?」

「それなら話が早い」

「無理ですね」

俺が言った瞬間、藤見椎葉はデカい目をさらにデカく見開いた。
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