春も嵐も
あれって、ベンツか?

少なくとも一般車ではないのは確かなことだ。

「パパがきたわ」

待っていたと言うように、藤見椎葉が言った。

「一緒にきて大正解」

フフッと笑うその姿に、ゾッとしたのは俺の気のせいだろうか。

ざわめき始める商店街の面々に対して、ガチャッと車のドアが開いた。

中から出てきたのは、スーツ姿の初老の男だった。

銀髪をオールバックにしているそのヘアースタイルは、資産家としての威厳を感じた。

「ようこそ、パパ」

藤見椎葉を見ると、藤見父は一礼をした。
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