春も嵐も
「商店街は僕の居場所であり、僕の家族なんです。

だから、お願いします」

頭を下げていることもあり、藤見父の顔が見えない。

彼が今どんな顔で話を聞いているのか。

どんな顔で頭を下げる俺を見ているのか。

沈黙がこの部屋に流れる。

この体勢も、だいぶキツくなってきた。

背骨、大丈夫かな。

そんないらない心配をしてた時、
「――わかった」

その声に、俺は頭をあげた。

「私が見なかった間に、嵐も大人になったんだな」

優しい顔で、藤見父は息を吐いた。
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