春も嵐も
桜狩――珍しい名字だけど、結構素敵だと思った。

何より、リコちゃんによく似あっている。

うんうんと首を縦に振ってうなずいている俺に、
「じゃあ、あたしこれで失礼するわね」

リコちゃんが言った。

えっ、失礼するって…?

「うん、バイバーイ」

「またね、嵐さん」

「お、おう」

手を振ってくるリコちゃんに戸惑いながらも、俺はその手を振り返した。

リコちゃんはニコニコ笑いながら、その場を去って行った。

しばらくリコちゃんの後ろ姿を見つめていたら、
「ダメよ、嵐」
と、弥生に声をかけられた。
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