春も嵐も
「高校も大学もバイトも、何かきっかけがあればいいなーって思ってた。

気のあう友達はできなくても、あいさつくらいはできる人ができればいいなって思ってた。

結果、全部ボツ。

人間関係になじめなくて、1人でさようなら」

投げやりに言った弥生の話を俺は黙って聞いていた。

「ここで働いてるのはあきらめたからって言う理由もあるし、あたしを1人で育ててくれたお父さんに恩返しをしたいって言う理由もある。

まあ、前者の方が理由的には大きいかなって思うけど」

そう言って笑った弥生は寂しそうだった。

「お菓子をつまみながらバカな話で盛りあがったり、文化祭とか球技大会などの学校行事をみんなで楽しんだり…あたしには、そんなことなかったな」

寂しい青春時代よと、弥生は笑った。
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