春も嵐も
食い逃げさせませんけど!

帰るんならお金払ってからにしてください!

俺の声は知らんぷりと言うように、リコちゃんと梓さんはさっさと店の外へと出て行ってしまった。

つーか、あいつら本当に夫婦か?

「ツケね」

美波さんがポツリと呟いた。

次に来店した時、絶対に払ってやる。

心にそう誓いながら、俺は帳簿に梓さんの頼んだものをメモした。

焼き鳥はレバーとネギマ、焼酎を2杯…と。

「それにしても、もうそんな季節か」

黄昏るように、美波さんがそんなことを言った。

「そんな季節って、何ですか?」

帳簿を元の場所に戻しながら俺は聞いた。
< 79 / 211 >

この作品をシェア

pagetop