春も嵐も
「美波がそんなことを?」

驚いたように弥生が聞き返した。

「浴衣で杉里さんのハートをつかむのよ、って」

「あたし、浴衣を持ってないんですけど」

「レンタルするか買いに行けって」

「美波のヤツ、一体何を考えているんだ…」

弥生はため息をつくと、額に手を当てた。

確かに、何を考えているんだと言う話である。

「美波さんが言いたいのは、自分が杉里さんと弥生の恋のキューピットになると言うことだと思う」

「キューピットって、全くもう!」

弥生は髪をクシャクシャにしながら、両手で頭を抱えた。
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