強がりも全部受け止めて
『あれ?そこにあるハンカチ…誰かの忘れ物かな』




棚の上にある水色のハンカチに気付いた亜希ちゃんが手に取ろうとしたのを私は手で軽く制した。




「ああ、それ私のなの。借り物で汚しちゃいけないと思ってそこに置いておいたのよ」




『これから返しに行くからここにあるんですね!どこの部署の人ですか?』




亜希ちゃんの素朴な疑問に、一瞬答えに詰まってしまう。




持ち帰ってしまったハンカチを私は汚れないように、自分のハンカチに包んで毎日持ち歩いていた。



…返すあてもないのに。

そう思うと持ち歩いてることになんの意味があるんだと、ここで眺めながら考えたりもしていた。




「え、と。会社の人じゃないの」




言いながら猛烈に恥ずかしさに襲われた。




社内にいない人のハンカチを、使いもしないくせに持ち歩き、給湯室で眺めていたなんて。




誰が考えてもそれは…




『笹岡さん、そのハンカチの持ち主に恋してるみたい』




そう、まるで恋する乙女そのものじゃないの……って。




「ち、違うわ。違うんだからね!」




まさに今、頭をよぎっていた考えを亜希ちゃんに言い当てられた私は、これでもかってくらい焦りながらそれを否定した。




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