今宵星
パチンと、携帯を閉じると
こっちをじっと見ている幸さんの視線に、気がついた。
『コウタと、なんかあったか?』
"コウタ"
その響きに、背筋が冷たくなるのをおぼえた。
幸さんは、あたしとコウタのことを知っている。初めて飲みに連れられたときに、どんな流れでかは忘れてしまったけれど
あたしは幸さんに、コウタとの一部始終を話していた。
顔に出ていたのだろうか。
店では、いつもの通りに笑っていたはずなのに。
『憎いか?』
『………いいえ』
『目は嘘をつけねぇ』
そう言う幸さんの目は、実に淀んでいるように見える。
憎いはずがない、憎めたはずもない。
ただ、あたしは彩りを全て失ってしまった。
世界はこんなにも広くて、彩りに溢れていたはずなのに
あたしの世界はコウタになった。
コウタを失えば、彩りなど一つさえ映らない。
『由実はだんだん、いい目をしてくる』
『………?』
耳元で囁かれた。
"俺好みの目だ"、と。