今宵星
縄手通りに近付くと、あたしと幸さんは車から降り、新橋の方へと歩いて行った。
通りすぎる、コンパニオンの女の子たちや直で行っている女の子たち。
一部営業のホストたちや、飲み歩く男たち。
同じ街にいるのに、ここの空気だけは異様に違う。
あたしが、この世界にいないからというだけなのか
きらびやかに見える光が、どれも妖しく輝いているように見える。
"楓"と掛かれたその店の前までつくと、中から二人のボーイが駆け寄り『いらっしゃいませ』、と頭を下げた。
この店は四層型になっているらしく
だけど幸さんはいつも、四階にある個室のVIPルームに通されていたので
あたしは店の内装など、てんで知らない。
個室なんかより、普通にひらけた所の方がいいんだけどな、と毎回思うのだが
連れてきてもらっている身でそんなことを言うことには、気が引けた。