桜の見える丘(仮)

ほんとは嫌いになるわけない。


でも…恥ずかしさのあまり…どうしてもその場を逃げたかった。


神谷に背を向けて、速足で歩く。


「ちょっ、前沢。怒るなって。」


ずしっと背中に重みが…。


神谷に後ろから乗られるような形で抱きしめられている。


「怒ってない。重いから離れろぉ!!」


「怒ってんじゃん。やだ。離れない。」


なんだ!?だだこねた子供か!


「いいから離れて。」


「おこんなって。美姫…」


「ひっ!」


い…いいいいいいきなり…名前で…。


耳元で低く囁かれた名前は…私の体をしびれ刺すような…。


「でも、俺…まじでお前の気持ち聞けて嬉しかったから。」


背中から重みが消えて、くるっと神谷が自分の方に私を向ける。


「俺と…付き合ってくんねぇか…?」
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