memoire




夏休みのある日
私は前から約束していた
リッチャンと花火大会へ行く為に
浴衣に着替え
母親に髪を結ってもらい
いつも必ずしている眼鏡を外し
コンタクトを入れると
いつもより少しおめかしをして家を出た。




唇に塗ったグロスがどうも慣れなくて何度も気にして
上と下の唇を合わせて擦ってしまい
待ち合わせの中学校の門に着いた頃には
グロスはとれてしまっていた。




夕方でもう日差しもないと言うのにカラッと暑く
ハンカチで何度も額の汗を拭う




「ミーチャン!」




約束の時間より少し遅れて
リッチャンが到着
私の名前を呼ぶなり
顔を覗き込んだ




「なに?」



眼鏡をしてない自分を見られているという恥ずかしさから
顔を背ける



「ミーチャン絶対眼鏡ない方が可愛いよ」



彼女はそう言ってニッコリ笑う




「アハハ…」



素直に喜べず私は笑って誤魔化した。



本当は嬉しかったくせに。





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