それはまるで腐敗した果実のように
「そういう伊澄は何も思わないわけ?」
「まぁ格好良いとは思うけど」
「だよねー。でも彼女いるらしいよ?」
「え」
「何か一年の子とキスしてんの誰かが見たらしい」
「ちょ、ほんとにあるんだね!女子校にレズ!びっくりー」
「まぁ戸浦さんならおかしくないよねー」
私はジュースのパックなストローを刺しながらわざとらしく驚いた。
実はそんなに驚いたわけではなかった。
と、いうよりも何も思わなかった。
興味もなかったし、興味とかそういう分類をするレベルのことでもなかった。
なぜなら私にとって同性愛というのも悠希も1番遠い存在だったから。
というよりも私は昔からずっと全て一歩後ろから他人のように接してきた。
全ての物、事、人は私とはまるで無関係であり、考える対象になかった。
友達を作るのは生活を穏便に送るためであり
他のことも、そういう全てに無関心な自分を隠す為に行っていた。
正直何を目的として生きているかわからなかった。
空っぽだったのだ。
そんな私が珍しく人に興味を持った。
何故悠希は私にいきなりジュースをくれたんだろう。
日頃何も興味を持てない私はこの感覚にある種の興奮を覚えていた。