愛乗りシンドバッド
俺は不思議な王宮にいた。

それはとても不思議というのに
ふさわしい。

外見は平たい印象で、
深い緑の栗型の冠を
屋根のドームとして乗せている
リゾート地にありそうな
宮殿である。

そのくせ宮室内は
『ヴォールト』と呼ばれる
半円を交差させたような
贅沢な丸天井や、
パイル織の大きな絨毯が
だだっ広い空間の幅をとる。

また、青銅と木で
細工された腰の丈ほどの
ワイドな足付き家具。

フカフカの錦の毛布を敷いた
大きなベッド。

まるで王様になった
気分だった。

「シンドバッド様」

と、急に室内の石柱の陰から
女の人が顔を覗かせて
ひょこりと現れた。

その優しそうな声で
すぐに誰だかわかった。
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