愛乗りシンドバッド
夏の陽射しがいい具合に
やわらかく差し込み
冷房が程よく効いてる
病室の窓際のベッド。

その場所に俺は
堂々とあぐらをかき
トランプをきる。

「ほら、地面に投げないで
100円よこしてください。
博打で負けたんだからさ」

――俺がこの病院に
入院してから一週間。

怪我の具合は順調に回復。

ベイブリッジから
派手にダイブして、
更に搬送された
病院の屋上から
またもや転落した俺は
非常識な男として
それなりに世間を
騒がせたのだったが、
すぐにメディアの関心は薄れ
マスコミは敏感に次の時事を
追いかける。

俺としては
よもや生きてはいまいと
覚悟したほどの
ぶっとんだ体験で
あったがために、
思い出すだけで
思わず冷や汗が出るくらい
心に深く刷り込まれた。
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