愛乗りシンドバッド
ハルは手すりから
海の家の屋根に
ピョンと乗り移ると、
自分の身長よりも
はるかに長いルフの羽根を
合戦ののぼり旗みたいに立てて
キッと海の彼方を
へいげいする。

「歪んだ愛情表現で
狂ってしまった王様は、
過去の恥辱を雪ごうと
愛するものを殺す。
よくある普遍的な話だ」

そう言ったハルの言葉には
なんだか他の意味も
込められているような
含みを感じた。

とにかく俺は
涙目で女の子座りをしている、
すっかりしょげてしまった
彼女を助けおこした。

アッバーサさん、
気にすることない。
今は町も道路も海岸も
みんな騒然としてるから
きっと大丈夫。
一緒に避難しよう。

俺も何も見ていません。(嘘)
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