0-WORLD
「マルクトのチャンプ、ゼロともあろうものが、こんなに甘い台詞を吐くとはね。今日は機嫌でもいいのか?」
困惑と興味が混ざった表情。やっぱりこいつらは何処までもマルクトのチャンプに用件があるのだ。俺は溜め息をつく。
「残念ながらおまえらが描くようなチャンプでも何でもないぞ俺は。ただのタウあがりの家無し。それらしくこんな薄汚い路地裏で酒をかっくらって夢を見てたって訳だ。其処をおまえらが邪魔をした、それだけのことなのに俺が自らの腕をふるうとでも思ったのか」
男に言葉を投げ掛けながら、俺の思考は別の方向に進んでゆく。
夢。
あれは夢だったのだろうか。いや、夢でないといけない。あれが現実であったとしたら、俺は間違いなくその内イエソドの収容所の中だ。
どんなに血に汚れても、俺はまだ意地でも狂人の判子を押されたくないらしい。
「…残虐な男だからな」男はそういい、醜く歪んだ笑みを見せた。憎悪。直ぐに、この男が俺に対して恨みを持っていることが解った。「此処までまじまじと目を合わせているのに、気付きもしない。あんたはあんたが思ってる以上に残忍な男なのさ、…ゼロ」
どうやらあの夢について今考えている暇はないようだった。
男にそういわれ、俺は半ば焦って自分の記憶の引き出しを次々開けてみた。だが、この男と一致する記憶は出てこなかった。むしろこんな場面まであの夢は俺の思考に入り込み邪魔してくる。
「…トリック」
俺がどうしても思い出せないことに、押さえきれぬ怒りを感じているのか、スウッと男の表情が消えた。今すぐにでもこいつをぶち殺したい、そんな思いに駈られているのを必死で圧し殺すかのように。
「覚えておけ、俺の名だ。ふん、今此処でやりあわなくても、時はいずれ来るのだった。わざわざマルクトにまで押し掛けてでも対面するような相手でもなかったな。まぁ来たついでにお前の街を散策でもしようか」
「ああ、楽しんでくれ」
即答した瞬間男は…、トリックは鬼のような形相で俺を睨んだ。これがこの男の本質か、なんてぼんやりと思うような俺だからこそこんな知りもしない男に恨まれるのかもしれない。
困惑と興味が混ざった表情。やっぱりこいつらは何処までもマルクトのチャンプに用件があるのだ。俺は溜め息をつく。
「残念ながらおまえらが描くようなチャンプでも何でもないぞ俺は。ただのタウあがりの家無し。それらしくこんな薄汚い路地裏で酒をかっくらって夢を見てたって訳だ。其処をおまえらが邪魔をした、それだけのことなのに俺が自らの腕をふるうとでも思ったのか」
男に言葉を投げ掛けながら、俺の思考は別の方向に進んでゆく。
夢。
あれは夢だったのだろうか。いや、夢でないといけない。あれが現実であったとしたら、俺は間違いなくその内イエソドの収容所の中だ。
どんなに血に汚れても、俺はまだ意地でも狂人の判子を押されたくないらしい。
「…残虐な男だからな」男はそういい、醜く歪んだ笑みを見せた。憎悪。直ぐに、この男が俺に対して恨みを持っていることが解った。「此処までまじまじと目を合わせているのに、気付きもしない。あんたはあんたが思ってる以上に残忍な男なのさ、…ゼロ」
どうやらあの夢について今考えている暇はないようだった。
男にそういわれ、俺は半ば焦って自分の記憶の引き出しを次々開けてみた。だが、この男と一致する記憶は出てこなかった。むしろこんな場面まであの夢は俺の思考に入り込み邪魔してくる。
「…トリック」
俺がどうしても思い出せないことに、押さえきれぬ怒りを感じているのか、スウッと男の表情が消えた。今すぐにでもこいつをぶち殺したい、そんな思いに駈られているのを必死で圧し殺すかのように。
「覚えておけ、俺の名だ。ふん、今此処でやりあわなくても、時はいずれ来るのだった。わざわざマルクトにまで押し掛けてでも対面するような相手でもなかったな。まぁ来たついでにお前の街を散策でもしようか」
「ああ、楽しんでくれ」
即答した瞬間男は…、トリックは鬼のような形相で俺を睨んだ。これがこの男の本質か、なんてぼんやりと思うような俺だからこそこんな知りもしない男に恨まれるのかもしれない。