0-WORLD
トリックは俺に情けなくもやられた取り巻きであろう男たちのからだに次々蹴りをいれて、呻き声をあげる奴等を無理矢理にでも起こしながら、俺に一瞥をくれ、みなと共に街に消えた。

ティファレトのチンピラか。別に面白いことにもなりそうにないな、とふと思い、また路地に座り込む。側には転がった空き瓶。もう瓶の形は保っていないが、あーあ。全部飲み干しておくべきだったな、こんな上質な酒が手に入ることも余りないのに、奴等のお陰で粉々だ。俺はすっかり忘れていた自らの額の傷を撫でた。ワインの色だな。


「ゼッ、ローッ!」


現れたか、また今日も奴が。飽きずに懲りずに諦めずに、いい加減俺にまとわりつくのは辞めて欲しいもんだな、なんちゃってショーガールさんよ。


「誰がなんちゃってだあい!」


心も読めると来た。
全くこの女、厄介に厄介を重ねたような奴の癖に、ホドのショーガールNo.1なんだから皆の目はどうにかしてる。

シャンはそういいながら俺に膝蹴りを食らわそうとするが、寸前で辞めた。どうやら今の俺はシャンに遠慮されるくらい傷だらけらしい。シャンの顔色も変わる。二重面相の女だな、本当に。
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