0-WORLD
いつもならパンチラ付きの回し蹴りをいれてくるぐらいパワフルで理不尽な女だが、その勢いを止めるくらいなのだがらあの雑魚野郎が放った空き瓶は余程高級な品だったんだな。俺の予想通りさ、ただいつもの櫓に放ってあったから勝手に飲んだだけだったが。


「ゼロ!…もう、また怪我してる。酷いよ!?この傷…額が…」


俺を心配そうに覗きこむシャンの姿がぶれる。
どろりとした液体が俺の瞳を濡らす。激痛が走り顔を思わず覆った。頭からとろりと血が零れ墜ちたのだろう。シャンの声が聞こえる。


「ああ、大丈夫!?全くどうしたって云うのさあ、マルクトの王者が、これじゃサマにならないよ!」

「いつでも勝てる筈がないさ、雑魚にやられることだってある、今のように。王者なんて響きはとても…」


厭だ。
俺は何の王だと云うんだ。
ただコロシアムで勝ち上がっただけ、それだけなのに。それだけの、何もない俺なのに。


今だってただ路地にうずくまって眠っていただけだ。
なのになんなんだ、急に俺を襲うやつなんてあとを絶たない。俺はただ安らかに過ごしていたいだけなんだ、コロシアムだって、金が必要になった時だけ出場する幽霊ファイターなのに。
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