0-WORLD
「とにかく、その傷をどうにかしなくちゃ。キリエ、キリエは?」
シャンが懇願するのは、治癒能力を持つ少女キリエの事だ。
医療機関というものに、当たり前には触れられないタウや家なしどもに、街を回って治療や診察などする少女キリエ。彼女は直ぐにマルクトの人間に認知され、今やタウからも家なしどもからも、…いや、このマルクトの人間総てが彼女を、女神と崇められるまでの存在となった。
「キリエはデューシイと一緒に街に出てる。多分側には居ないだろう。平気だ、こんなの…」
目を覆った血を手でこすった。
手のひらを眺めると、其処には命の色。
時々思うんだ。俺が今見ている現実はほんとに現実なのかって。この命の色も、本当は偽物なんじゃないかって。…俺たちは、目に見える情景に惑わされて生きているだけじゃないのかって。
「ん、じゃあライ先生に診てもらお?クローズにはなってないだろうし、ね、ゼロ!」
シャンは俺を労るように優しく立ち上がらせようとしたが、俺はそれを撥ね付けた。要らないと云っているだろうよ、あんたの優しさなんて、皆の優しさなんて。
「ゼロ!…んもうっ」
「あんたはあんたの心配してな。俺はひとりでkissに行く」
立ち上がると共に、路地に血が墜ちた。ブラッド。そう、それは俺が好きな色だ。
シャンが懇願するのは、治癒能力を持つ少女キリエの事だ。
医療機関というものに、当たり前には触れられないタウや家なしどもに、街を回って治療や診察などする少女キリエ。彼女は直ぐにマルクトの人間に認知され、今やタウからも家なしどもからも、…いや、このマルクトの人間総てが彼女を、女神と崇められるまでの存在となった。
「キリエはデューシイと一緒に街に出てる。多分側には居ないだろう。平気だ、こんなの…」
目を覆った血を手でこすった。
手のひらを眺めると、其処には命の色。
時々思うんだ。俺が今見ている現実はほんとに現実なのかって。この命の色も、本当は偽物なんじゃないかって。…俺たちは、目に見える情景に惑わされて生きているだけじゃないのかって。
「ん、じゃあライ先生に診てもらお?クローズにはなってないだろうし、ね、ゼロ!」
シャンは俺を労るように優しく立ち上がらせようとしたが、俺はそれを撥ね付けた。要らないと云っているだろうよ、あんたの優しさなんて、皆の優しさなんて。
「ゼロ!…んもうっ」
「あんたはあんたの心配してな。俺はひとりでkissに行く」
立ち上がると共に、路地に血が墜ちた。ブラッド。そう、それは俺が好きな色だ。