0-WORLD
「待ってよ!あたしも行くってば!」

「…勘弁してくれ」


呟いた声は完全にはシャンに届かなかったらしい。少し立ち止まり、黙ったまま俺のあとをちょこちょことついてくる。身長158センチのショーガール。こんな背丈で通用するんだからシャンのソレは余程イイもんなんだろう。

…所詮、俺がこの女を見る視線はこうだ。
だから好きとかナニだとかで、俺につきまとうのは辞めてくれとあれほど云ったのに。こいつは、辞めない。何処までも、それを辞めない。


「余程耳が悪いらしいな」


「へ?なに?」

「…やっぱり、そうに違いない」


立ち止まりうつ向くと其処には無機質なコンクリイト。
飛び散った血痕は俺のものかそれとも他の誰かのものか。考えなくとも答えは解る。俺は誰かと混合している、無意識的に。歯をギリギリと鳴らした。俺の意思じゃなかった。


「ゼロ?どうしたの、傷が痛む?大丈夫?」


うつ向く俺の前に小走りで現れたシャン。

スポーティーな金髪のショートカットとボーイッシュなつなぎ、そして真っ直ぐ伸びる健康的な素足。
夜のステージのシャンからは想像できないな、アバンギャルドなシャンのステージは評判で、下層街のマドンナと呼ばれる程の人気を得てる。

そんな女と共に、ラビッシュな俺が居るということは間違いなんだ。
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