0-WORLD
狭間の世界
知らない。
知らないんだ。
天井の蒼に飲み込まれるように、存在する広い草原なんて。…俺は、知らないんだ。地球なんて、そんなファンタジーな世界を。
「…何かの間違いだと…いってくれよ…」
だったら俺は狂ってしまったのかって。
俺は夢を見ているのだろうが、その事実は俺に狂人という判子を押すものと何ら変わりない。
それは、俺に“記憶"という病を認めさせることだから。
「…頼むから、さ」
誰に請うているのだろう。
このまあるい空間には俺ひとりしか佇んでいないように感じる。解らないけれど、何処までもこの空間は続いているから。まるで果てもないように。
だけどこの世界には、俺ひとりしか放り込まれていないのだと感じる。そんな驚異が、川という名のせせらぎや、緑という名の植物たちを通して、伝わってくる。
全く持っておぞましかった。絵本でしか見た事のない童話の世界に包まれ、俺は息が詰まることを感じた。懐かしいと、思ってしまうのだろうか、実在しない、エデンの世界を。
気付いた時には、俺は一歩一歩草を踏みしめ、この世界を探り出していた。