0-WORLD
「えっ…それって、ジルぅ!」

ジルのからだに腕を回しきゃいきゃいとはしゃぐシャン。次に出てくる言葉はこうだ、いいか…、『そんな大事なコト、シャンに教えてくれてありがとお〜っ!』

「階、段」

「…ふぇ?」

シャンがジルに引っ付いたままくるくると大きな瞳を目一杯開いた。目玉、飛び出すんじゃないのか?

「おもむき」

「…が、あるって?」

「デュシイ、好き」

「…要するに、このボロい空間をデューシイが気に入ってる…ってことを云いたいんだよな?ジル」


俺が促すとジルはぶんぶんと首を縦に降った。目はまんまるに見開かれている。シャンというと、ジルに抱きついたままぶすくれている。


「な〜んだ!乙女の恋ばなだと思ったのになぁ。つまんないなぁ」


お前の思考回路は恋恋恋、恋だけか。
いや、もう解りきった事だったな、シャンというのはこんな女だってこと。


階段を降りながら思う。
看板の安っぽい電飾といい此処といい、取り扱ってる品物は一級品ばかりなのに(一流デザイナーのバーベナが特別仕様でkissには安値で売ってくれるのだ。その代わり質は下がるが)どうも安っぽさや汚れを好む傾向がある。よく解らないマヌカンだ、デューシイは。…いや、シルビアというのが正解なのか。
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