0-WORLD
「店、モドル」


ジルが一言そういった。ジルもマヌカンでデューシイの下で働いている。要するに店番だな。


「ジルぅ、どーせ直ぐ上行くから、お店頑張んなね!」


シャンはそういい今度はジルにハグをした。忙しい女だ。ジルはシャンを受け止めるのに少し苦労しているようだった。

その間に俺は丸椅子に座った。相変わらず、落ち着かない。やっぱりこう、むずむずするんだ、いりょう、きかん、って奴は。


「強打しているようだから一応少し調べよう。面倒かい?」

「ああ、あの訳のわからんカプセルの中に入るのはごめんだね」

「それでも入ってもらうからね」

「…はい」


気の弱い皮を被った狼なのだと俺はライの事を思う。
おどおどうぶな感じを見せておきながら、白衣を身につけたライには何処か逆らえない雰囲気を感じる。

それは人の生命を預かるものとしての気迫なのだろうか。…俺は医者になんて、とてもなれないね。だったら俺は命を奪う死神でいいと、卑屈に思うしかない人間だからだ。


「大丈夫だよ、いつものように直ぐ終わる」

「…俺には永久のような時間に感じられるがな」


ふふ、と柔らかく笑うライ。…やっぱり、ライには悪いが俺はキリエの治癒でぱぱっと事を済ませたいよ。だけどキリエは機械じゃないし、からだが幾つもある訳じゃない。その為にこのライが居るし、その為にあのキリエが居るのだ。
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