0-WORLD
響くのは歓声。
人間の汚れを肯定する歓喜。殺れ、殺ってしまえ。その様子をこの目で見る事が出来れば、自分たちの喉が潤うと。


俺はリングの上に居る。
蒼い君へ、解っているか?
お前があの頃望んだ最強への途は、今の俺を此処までかってくらい苦しめているんだよ。夢が叶えば幸せになれるなんて、そんな甘ったるい考えを信じていたのか?


「もう決着はついてるでしょ!誰が見たって解るわ!審判!止めて、止めるのよ!あの子をこれ以上壊さないで!」


あの子…俺の事か?
はは、ユリィ。お前はいつから俺をあの子呼ばわりできる身分になった?笑わせてくれるなお前の声なんか、ただ遠くで聞こえるだけで。


審判とユリィに呼ばれた、ゼブラなハットを深く被った女…『ジャッジ』は未だ判定を下す気配がない。

ネツァクのコロシアムの鬼畜審判の異名は伊達じゃない。
奴はいつでも『自分ルール』で判定を下す。とは云っても、勝ち負けを判断するのではなく、いつ判定を下すか、そのタイミングは総てジャッジに委ねられている。つまり…


どちらかが死ぬまで、そんな試合を作ることが出来る。例えば今だ、リングに転がり、生気も闘魂も無くしたただの肉の人形に、トドメを刺せと奴は俺に云っているのだ。
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