愛してるを心から
中学3年の春。
さわさわと風が頬を撫でていく。
包む空気が優しくて私は笑みをこぼした。
「裕子、おはよう」
と、急に肩を叩かれた私。
驚いた表情で後ろを見ると、悪戯っ子のような笑みを浮かべた茉莉が立っていた。
茉莉は、小学校からの友達で何でも話せる、唯一の存在。
「おはよう、吃驚した」
隣に立った茉莉に私は笑った。
と、茉莉も同じように笑うと私の手を急に強く引っ張った。
「裕子、ポカポカしてるからってぼけ過ぎ!私8時に家でたから、今多分20分くらいかな?」
「え、嘘ー!私そんなに遅く出たのかな!?あと、10分で始まっちゃうじゃん!」
鞄に入れていた携帯を取り出し時間を確認する。
ディスプレイに映し出された時計は18分と白く光っていた。
「ね?」
茉莉が携帯を覗き込みながら言う。
私は慌てながら携帯をスカートのポケットに収めた。
「走ろう・・・」
そう呟いた私は、引っ張られていたはずの手をしっかりと持ち直し、・・・走った。