愛してるを心から



ガッと足を前へと伸ばす。


一歩一歩大きく、砂を蹴るように。




一気に歓声が響いて俺はその中を走った。



腕を伸ばしバトンを渡す。



その相手は、裕子の友達の相田茉莉。



バトンが彼女の手に入ると相田はニッと笑って俺を見た。




俺の握っていた手が緩み、代わりに相田のバトンを握る手が強くなった。



走りきった。



ぜぇぜぇと、息を切らしてコースを外れる。



相田が笑った理由は分からない。




だけど、微かに動いた彼女の口は「 頑張れ 」そう言っているように見えた。




顔から流れる汗を拭く。


達成感と一位になれなかったくやしさとが入り混じる。




裕子の頑張れの声。



それを思い出す。




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