最後の天使


「隆二くん…ごめんね、あたし手続きしてきますね」



「お母さん、僕送ります」



俺もお母さんと立ち上がり、
よろめく体の肩を持ち、
お母さんを支えた。


美紀…

俺らが帰ってきたら
起きててくれよ…



しかし、
美紀は、綺麗な着物を着せられ、
指輪の着いた手を重ね、
胸の上で置いていた。




俺とお母さんは
何もしゃべらず
しゃべらなくなった美紀をずっと見つめていた。



『じゃあ、がんばってね笹乃丸くん』


『そうだね、あたしもそう思うよ』



――――『ここにいて。どこにも行かないで』――――


『うん、ありがとう』


『大丈夫』






――――――――…『やってみなきゃわかんない。貴方と2人だからやれる、やり遂げられる』



そう言ったのに…

また
起きて
そう言ってくれよ。


もう一度馬鹿だと笑って

もう一度幸せだと泣いて

もう一度駄目だと怒って

もう一度、


もう一度、



もう一度…



キスをして。
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