最後の天使
「あ、はい。わかりました。お疲れ様です」
そいつは
汗臭い手で
俺の肩を叩いて消えていった。
夜10時。
ポツンと社内には
俺の呼吸音と、
俺の打つパソコンだけ。
カチカチと
クリック音と
キーボードをはじく音。
そして
10分に1度程度に
俺のため息が混ざる。
俺は、
笹乃丸 隆二(26)
ここの会社に
夢を、
希望を持って入った
あの頃はもう終わってしまったのか、
独身の俺は
『残業係』と名付けられてしまうほどだった。