最後の天使


そう言ってアヒル口の
口元をクイッと上げた。



「じゃあ、ブラックで」


「はあーい」



山本は
どう見ても
社内で5本の指には入る
可愛さだし、

彼氏がいたって
おかしくないだろ。



「山本彼氏は?」


「え、彼氏…」


山本はコーヒーをもったまま
立ち止まり、
口ごもった。


「なんだよ、いるなら帰ってあったりしないのか」


「きゃっ!」


山本は見事
絡まったケーブルに足を引っ掛け
コーヒーを自分にぶちまけた。



「あらら、これじゃ余計仕事増えたな」


俺は冗談を言いながら、
スカートにこぼしたコーヒーを
ポケットから取り出した
ハンカチで拭いた。



「ほら、袖にも…」



そう言って
暑苦しい
カッターシャツの袖をめくると、






「どうした?…この青あざ」



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