わがまま猫王子。
ミナは笑顔で家の外にいる俺の元へやってきた。
ああっ……その笑顔が眩しいよ、ミナ。抱き締めて、この腕の中に閉じ込めておきたい。
「……ああ」
俺は何とか理性を保ち、ミナの細い肩を抱いた。
いよいよデートが始まる。
帰るまでがデートだからね、ミナ。その時まで絶対離さないよ。
映画館の中、ミナは俺にしがみついていた。
「……いやっ…」
小さく悲鳴を上げ、俺の肩に顔を埋める。
スクリーンからは、背中が凍るような不気味な効果音と白装束を纏った髪の長い女の人。見れば、背中に刃物が刺さっていて、白い着物に、鮮やかに赤が浮き出ている。
つまりは、夏の定番、ホラー映画。
俺は甘々のラブラブ映画を見ようと提案したのに、なぜか彼女は怖いのを見ると言って聞かなかった。本人いわく、ホラー映画には強いらしい。
でも……今の彼女を見るかぎり彼女のその言葉は99%嘘だ。
強がっちゃって……でも可愛い。