わがまま猫王子。
俺はミナの肩を抱き寄せる。細い肩はカタカタ震えていて、思わずぎゅっと抱き締めたくなってしまう。
ミナ……可愛いミナ。
どんな怖いことがあっても、俺に抱きついておいで。
俺が守ってあげるからね……。
映画が終わり、観客席に薄明るい照明がつくと、ミナの下瞼は赤くなっていた。
「…もうっ、そんなにジィッと見ないでよ!!」
ミナは憤慨する。そんな怒った顔も可愛くて……ついつい頬が緩む。
「やっぱり怖かったんじゃん」
「怖くないわよこんなの!」
ミナは悔しそうに頬を膨らます。よくマンガとかでそういうシーンがあるが、実際にやっている人は初めて見た。
「可愛い、ミナ」
俺は立ち上がり、ミナに手を差し出した。ミナは困った顔で見上げた。
「…何よ」
「ミナ姫。一緒に行きましょう」
「何であなたと手なんかっ……」
「いいから」
このままだといつまで経っても埒が開かなそうなので、俺からミナの小さい手をむんずと掴んだ。
「ちょっ…何すんのよ!!」
歩きながら、ミナはポカポカと俺の背中を叩く。力は強くないので、肩たたきをしてもらっているみたいだ。
「……何よ…いきなり…」
俺が反応しないでずっと無言でいると、ミナはおとなしくなった。
2人とも無言のまま、映画館を出て外を歩く。前から歩いてくる女の子たちは俺の顔を見て赤くなっているけれど、そんなのは眼中にない。
振り返れば、白い頬をピンクに染めて、恥ずかしそうに俯いている、愛らしいミナがいる。
今日俺は、頑ななミナの心をとろけさせたいと思う。
「……ねえ、みなと」
俺たちは河川敷沿いに歩き、橋の下にミナを連れ込んだ。コンクリートの壁にミナを押しつけ、俺は手をついてミナを囲む。
背後では美しい川が流れていて、太陽の光がキラキラと反射し、まるで川全体がダイヤモンドのようだ。