わがまま猫王子。

 彼女は俺が好きなんだ。


 彼女は素直じゃないから、好きの裏返しでイライラしているんだ。

 長年生きてきたからそれくらい分かる。



 「……ウソつきだね。ミナは」

 「嘘なんかついていないじゃないっ! それより何なの!? 後をつけてこないでよ」

 「だってしょーがないじゃん。同じ方向なんだもん。しかも科学室と地理室隣同士なんだもん」


 「…それにしたって、私にべったりついていくることはないでしょう?」


 「……だって、ミナが可愛いんだもん。誰でも、気になる人の傍にいたいって思うじゃん?」


 「……私は思わないわ。好きな人いないもの」


 だーかーら、俺のことが好きなんでしょ?

 今だって俺が一緒にいてくれて嬉しいくせに。

 俺は知ってるんだよ? ミナが教室出るとき、いつも俺の教室を確認してること。ホントは来てほしいんでしょ?



 「…分かった。分かったよ。これからは、ミナの近くに行かない。ごめんね…迷惑掛けて」
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