籠の鳥
不気味な痣が残っている。



小さい頃からずっと水で洗って落とそうとしたが、落とせなかった痣。

僕は分かっていたかのように静かに答えた。

「母さんは、妖怪だったんでしょう?」

男はニヤリと笑う。

しかし僕は頷かなかった。

「連れて行きたい人達もいるんです。僕の家なら、勿論連れて行っても大丈夫ですよね?」

すると男は笑顔を崩した。

「君のお母さん、姫は人間が嫌いなんだよ。勿論人間の味方をする妖怪もね。だからあまり姫の城をけなさないでくれ」

「なら行けません。母さんが待っていても、僕には仲間がいるので」

「つれないね」

そう言うと男は1人で歩き出した。

「別にいいさ。ただ、この森は姫の支配下だ。姫の許可がない限り出ることはできない。ここは出口のない迷路。賢いまだらくんなら、どうしたらいいか分かるよね?」

最後の言葉で僕を振り返り、前に向き直った後、突然姿を変えた。



2つの尻尾をユラユラと振り、その狐は森の奥へ姿を消した。
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