腹から叫べ!
「その声の主はナイン君でした。彼は当時、私のクラスメートでしたから、すべて状況を把握していたでしょうね。
彼はその5円玉の穴を覗いてこう言いました。『あれ、シオリちゃんが泣きそうな顔してる。』と。
あ、シオリちゃんっていうのは私の彼女の名前です。
その時無性に泣きたくなって大声で泣きました。
ナイン君は肩を貸してくれました。
気が済むまでずっと泣いて、泣き止むとナイン君は『これも何かのご縁だし、友達になろうぜ。ほら、5円だけに。』と寒いシャレを言ってまた5円玉の穴を覗いてこう言いました。
『あれ、今度はシオリちゃん笑ってるぞ。お前と一緒にいれて幸せだった、ってさ。あーあ。お前は幸せもんだよ。もっと生きて、この世の土産話いっぱい作ってからあの世に行かないとな。彼女に悲しい顔させんなよ。』って。」