先生との恋☆Second・Story☆完結☆
でも。
それだけでも何のことを言いたいのかは十分分かってる。
毎回毎回、見送る時の決まりごとのようなセリフ。
「……分かってる」
少し頬を膨らませながらそう言えば、高橋は笑顔。
何が嬉しいのかあたしには意味が分からないから、笑い返したりはしないけれど。
「いってらっしゃい」
「……いってきます」
ひらひらと楽しそうに手を振りながらあたしを見送る高橋に呆れながら、今度こそ玄関へ。
ドアを押しあけてバイトへと向かう。
……実は、
この瞬間が一番嬉しかったり。
高橋とはいつも病院で、出迎えると言えば無駄に様子を見に来る高橋をあたしが嫌そうな顔をしてベッドの上で……ってことばかりだったから。
こうして
嫌いだった病院から解放された普通の生活の中で。
普通のカップルみたいに当たり前の生活を出来ている事が、すごく嬉しい。
そして、病室に来る高橋を出迎えて、去って行く高橋の見送るばかりだったあたしがこうして高橋に見送られて外に出て行くことが嬉しくて嬉しくて仕方が無い。
……ただ
『医者』の高橋を見る事が少なくなったのは残念。
手術した後でも心配性なのは全く変わらないけど。
マンションにいればただの30前の男にしか見えない。