貴公子と偽りの恋
「いいのか? 頼んじゃって」

「うん、がんばるよ。味は保障出来ないけど」

「それは大丈夫だろ? 美味そうじゃん、それ」

「これはお母さんが作ってくれたの。明日からは自分で作る」

「なんだ、そうか。だったら無理すんなよ」

「ううん、作りたいの。作らせてください」

私はそう言って、香山君に頭を下げた。

「わ、分かったから顔を上げろよ」

「ありがとう」

香山君を見ると、ニッコリ微笑んでいた。

香山君の笑った顔、すごく久しぶりに見た気がする。しかもこんな間近で見られるなんて…

「おまえ嬉しそうだけど、作るからには美味いの作ってくれよ。少なくても、これよりは」

香山君は自分で作ったお弁当を持ち上げてみせた。

「それは大丈夫だと思う。たぶん」

お料理の本、買わなくちゃ。
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