貴公子と偽りの恋
俺の心臓はドクドクとうるさく、手に汗が滲んできた。

もし俺がいま抱きしめたら、優子は嫌がるだろうか…

ちゃんと気持ちを伝えないうちにそういう事するって、よくないよな…

気持ち?

俺の気持ちって、どうなってるんだ?
竹中恵にまだ未練があるんじゃないのか?

だったらこの胸のドキドキは何なんだ?
優子が竹中恵に似ているからか?

分からない…

喉が渇いてペットボトルのお茶をゴクリと飲んだら、優子と目が合った。

そう言えば優子は飲み物を持っていない。

「おまえ、飲み物は?」

「忘れちゃった」

「じゃあ、これ飲めよ。むせるだろ?」

俺はそう言って俺が飲みかけのペットボトルを、優子に差し出した。
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