貴公子と偽りの恋
「そんな哀しい顔をしないでくれ。俺は充分にバレーを楽しんだから」

「はい。先輩、お疲れさまでした。卒業後も、時々でもいいですから、コーチをお願いします」

「おお、分かった」

竹中恵はやっぱりいい子だなあと思った。

しかし、俺はこの子と普通に先輩として、会話をしている事に気付いた。

特にドキドキするわけでもなく、ごく平常心だ。

それと、もうひとつ気付いた点がある。それは、竹中恵と優子はさほど似ていない、という事。

なぜ二人が似てると思ったのか、我ながら不思議だ。


それを確認しようと横を向いたら、そこにいたはずの優子はいなかった。

そして俺の目に映ったのは、遼を見上げる優子と、その優子に顔を近付ける遼だった。
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