貴公子と偽りの恋
思わず足を一歩踏み出そうとしたら、遼の顔が優子から離れた。

優子を見ると、恥ずかしそうに、頬を赤らめている。

あいつら、何をしようとしたんだ?
あるいは、何をしたんだ?

まさか、き、キスをしてたのか!?

俺は、猛烈な怒りが込み上げた。
怒り過ぎると、意外と言葉は出ないものだと、この時知った。

3階に降り、それぞれの教室に分かれる時も、俺は無言で優子に背を向けた。

すると、誰かに後ろからワイシャツを引っ張られ、振り向くと戸惑ったような優子がそこにいた。

「今日、一緒に帰ってくれる?」

優子は笑顔のつもりらしいが、顔が引き攣っていた。今にも泣き出しそうに見えた。

俺にすまないと、思っているのだろうか…
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