貴公子と偽りの恋
俺は怒りで言葉が出なかった。

また、無理に口を開いたとすれば、優子を激しく罵倒するか、詰問するだろう。

それは避けるべきだと思い、俺は再び無言で優子に背を向けた。


教室に入った時、遼が俺の肩に手を置き、耳元で囁いた。「おまえの彼女も可愛いな?」と。

それを聞いて、俺は切れてしまった。

「この野郎、優子に何をした!?」

俺は遼の胸倉を掴んで締め上げた。

「な、何の事だよ?」

「しらばっくれるな! さっき屋上で、優子に何かしただろ?」

「話をしてただけだよ。く、苦しいから、やめてくれよ。みんな見てるし」

「うるせえ! 話をするのに、あんなに顔を近付ける必要があるのか?」

「ああ、あれはコンタクトだよ」
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