貴公子と偽りの恋
「コンタクト?」

「そうだよ。篠原さんがコンタクトに慣れてなくて、目が痛いって言うから、見てやっただけだよ」

遼を掴んだ手から力が抜けた。

俺の勘違いと分かってホッとしたものの、別の疑問が浮かんだ。

コンタクトで目が痛いだって?

「俺にはそんな事、言ってなかったぞ」

「ふう、苦しかった…。むきになりやがって」

遼は衿元を直しながら言った。

「悪かった。なあ、何で優子は俺に言わないで、おまえに言ったんだろうな?」

「さあ…。たまたまじゃないか?」

「たまたま?」

「ああ。そうじゃないとしたら、おまえの前では無理してるのかもな」

無理か…

優子は明るく振る舞っているが、本当は無理をしてるんだろうか…
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