貴公子と偽りの恋
「それにしても裕樹、今回はおまえも本気だな?」

「何が?」

「もちろん、篠原さんの事さ」

「なんでそうなる?」

「女の事で、あんなにムキになったおまえは初めて見たよ。ヤキモチ妬いたんだろ?」

ヤキモチ?
遼と優子に抱いた怒りは、ヤキモチだったのか…

「おまえ、ヤキモチ妬いたの初めてじゃないか?」

「初めてじゃないよ。俺だってヤキモチぐらいは妬くさ。でも…」

「でも?」

「あんなに激しいのは初めてかもしれない」

俺は昔から独占欲が強く、嫉妬深い方だと思う。ヘラヘラ笑って顔に出さないようにしていたが。

竹中恵が遼を選んだ時も、俺は遼に嫉妬した。しかし、今日ほど激しいものではなかった気がする。

「だろ? 認めちまえよ。篠原さんへの気持ちを」

俺は……篠原優子が好きだ。

竹中恵の身代わりとしてではなく、優子そのものが、好きなんだ。自分でも驚くくらいに。

「遼、認めるよ」
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