貴公子と偽りの恋
放課後になり、俺は教室で優子が来るのを待っていた。

しかし、優子はなかなか来なかった。

優子は『一緒に帰ろう?』って言ったよな?
なぜ来ないんだ…

あ、しまった。

あの時俺は、怒りのために返事をしなかった。それを拒絶と受け取って、一人で帰っちまったのかもしれない。

くそ!

俺は鞄を引っつかむと、優子の教室を目指して走った。

1組の教室を覗くと、優子はまだそこにいた。こちらに背を向け、誰かと話をしていた。

俺はホッと胸を撫で下ろし、優子に向かって歩いて行った。
他の奴らにジロジロ見られたが、そんな事は構うものか。

優子のすぐ後ろまで行くと、優子が話してる相手、確か杉下って名前の女子が、俺をチラッとみて、

「優子は彼氏と帰るんじゃないの?」

と聞いていた。

『彼氏』か…、いい響きだな。俺の事だよな?
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