貴公子と偽りの恋
「俺が馬鹿な条件を出したばっかりに、おまえを苦しめた事をすまないと思う。条件は取り下げるから、本来のおまえに戻ってくれ」

終わった…

そもそも、香山君から出された条件を果たせなかった時点で、香山君と付き合う権利を私は失っていた。

私はそれを分かっていながら、わざと気付かないふりをしていたんだと思う。

バカな私…

鼻の奥がツーンとした。
私は泣いた顔を香山君に見られたくなくて、涙が溢れ出す前に立ち上がった。

「私こそ、ごめんなさい。無理に付き合わせちゃって」

香山君も立ち上がった。

「いや、優子は何も悪くない。悪いのは全部俺だから」

香山君が優しくて、余計に悲しくなり、もう限界だった。

「ごめんなさい。さようなら」

そう言って私は香山君に背を向け、駆け出した。
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