貴公子と偽りの恋
「……… 嘘?」

「ほんとだよ。気付くのに少し時間が掛かったけど、俺はどうしようもなく、君を好きになっていたんだ。他の誰よりも」

「メグちゃんより?」

「もちろん」


止まっていた涙が、再び目に溢れ出し、香山君の顔が涙で霞むから、手の甲でそれを拭った。

「泣かないでくれ」

「ごめんなさい。涙が勝手に出て、止められないの。でもね、これは嬉し涙なのよ」

「優子…」

「きゃっ」

私は、香山君にギュウッと抱きしめられていた。

手提げ袋を地面にポトリと落とし、私は香山君の背中に腕を回した。

「俺の心臓がすごい事になってるの、分かる?」

「うん。私もすごくドキドキしてるの、分かる?」

「分かるよ」

香山君は、私の頭を優しく撫でながら、「優子は、可愛い過ぎ」と言ってくれた。
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