貴公子と偽りの恋
「どうして、もっと早く告白してくれなかったんだよ?」

「香山君だって、どうして私の想いに、気付いてくれなかったの?」

「俺達、ずいぶん遠回りしたみたいだな?」

「うん。でも、願いが叶ってすごく嬉しい」

「願い?」

「毎年、七夕の短冊に願いを書いてたの。『貴公子とお友達になれますように』って」

「それでこの前、友達に…って言ったのか…」

「うん」

「友達でいいのか?」

「それは…香山君の意地悪!」

香山君は「あはは」と笑った後、急に真剣な顔に変わった。

「優子…」

「ん?」

「キスしていいか?」

「………!」

私は返事の代わりに、そっと目を閉じた。


触れるだけだけど、長くて、甘い、私のファーストキスだった。



(完)

※よろしかったらエピローグもお読みください。
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