貴公子と偽りの恋
お母さんに車で駅まで送ってもらい、塾には何とか遅刻しないで済みそうだった。

電車に乗り込むと、強めの冷房が心地好かった。

「間に合いそうだね?」

「ああ。でもさ、塾なんかサボって、どこかへ遊びに行かないか?」

突然言い出した裕樹の提案に、つい『うん』と答えそうになった。

と言うのは、裕樹と付き合うようになったものの、まだ何回もデートらしいデートをしてないから。私だって、本当は裕樹とどこかへ行きたい。

でも、私には必死に受験勉強しなければいけない事情があった。

「急にどうしたの?」

「何かさ、急に勉強する気がなくなったんだよ」
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