貴公子と偽りの恋
学校へ着くと、いつもの朝とまるで違う事に驚いた。

いつもは校門の手前から登校する大勢の生徒や、服装チェックをする先生やらでガヤガヤしているのに、今は登校する生徒はぽつりぽつりいるだけで、静かな中に、校庭で朝練に励む運動部の話し声が、やけにはっきり聞こえて来る。

30分早いだけで、こんなに違うんだ…

あ、香山君はバレー部だから、もう来て朝練してるかも…

私は昇降口に誰もいない事を確認し、3年3組の『香山』と書かれた下駄箱の扉を、そっと開いた。

そこには、きちんと踵が揃えられた、香山君の上履きがあった。

私はホッとしながら、もう一度誰もいない事を確認すると、鞄からピンクの封筒を取り出し、香山君の上履きの上にそっと乗せた。
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