貴公子と偽りの恋
下駄箱の扉をパタンと閉めたものの、私はそこから動けなかった。

やっぱり、止めようかな…

香山君が私の告白に応じてくれる可能性はほとんど無い。
それ以前に、裏庭に来てくれないかもしれない。

私の気持ちを知られる事で、今までのように、遠くから香山君を見つめる事が出来にくくなるかもしれない。

そんなの嫌だ。どうしよう…

やっぱり止めようと思い、下駄箱の扉に手を掛けた時、人の足音が聞こえた。

私は慌てて手を引っ込め、急いで自分の下駄箱に移動した。

登校して来たのは、違うクラスの女子だった。

『おはようございます』と、お互いに会釈をしていると、また別の人が登校して来た。

もう、香山君への手紙を回収するのは無理だ…

私は覚悟を決めた。
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